Welfare Support|福祉用具
No. 001-テクニカルエイドと生きる自信 <ユーザーの立場から>
はじめに
近年、重度障害者とテクニカルエイドをとりまく環境に目をむけたとき、障害者にとって避けて通ることの出来ない大きな動きが始まっている。「IT革命」「IT社会」という言葉で代表される情報通信技術の動きと、導入が検討されている障害者の介護保険である。そうした動きの中で、介護保険をはじめとする社会システムの確立の下に、「IT社会」の恩恵をテクニカルエイドの一部として最大限に活用し、生活の質を変える努力をすることで、重度障害者の生活環境も「ゆとりと潤い」のあるものへと大きく変わると思われる。
今回は、これまで受けてきた支援技術、われわれに「生きる力と自信」を与えてくれるテクニカルエイドについて述べたいと思う。
人・支援技術・エイドとの出会い
交通事故により、頸髄を損傷し(C−4)四肢の機能を全く失った私は、地域の中で多くの人と関わりをもちながらしてきた仕事を断たれたことによる途絶感と、当時3歳半だった娘を一人前に育てられるだろうかと悩み、可愛いしぐさを見せる我が子を引き寄せ抱きしめることの出来ないもどかしさと苛立ちから、自暴自棄の毎日をおくっていた。
受傷より20年経った今、岐阜県の「福祉メディアステーション支援事業」の企画運営アドバイザーや、重度障害者の在宅就労支援事業の支援チーフ、医療福祉専門学校の非常勤講師、福祉工房(相談・支援・販売)のオーナーとして、就労願望を抱いていた頃からは考えられないほど、休みもなく多忙な毎日を送っている。
その過程をふりかえると、現在の生活を送ることが出来るようになるには大きく分けて3つの要因(これを私はあえて宝物と呼んでいるが)あった。一つ目は、食事のことから排泄まで身の回りの全ての介護をはじめ、見えない所で支えてくれる「家族の愛」。二つ目は、失った手足の機能を補ってくれる福祉機器や、それらを研究開発する「支援技術」や人との出会い。三つ目が、少しずつ生活環境が充実し自分にも出きることが増える中で、社会に目が向き参加をしていく過程での「人との出会い」。これらの要因が、受傷後の人生に大きな影響を与えたと云っても過言ではない。
環境制御装置を始め、ワープロやパソコンの入力装置の開発。情報を含めた、新たな人との出会いや機会・場の提供も含めた支援。これらのおかげで、失いかけていた自己の存在感や自信、生きる目的を取り戻すことが出来た。図1に示すように、当初は作業療法士(以下、0T)や理学療法士(以下、PT)、エンジニアの支援・指導からスタートした家庭生活も、導入した生活基盤を支える機器やコミュニケーション支援機器により、徐々に外に向けて自らの意志で働きかけることもできるようになった。「お世話になって何もしないで寝ているだけでは・・・、次にお会いするまでに少しは自分でも努力をして進歩してないと・・」 「こんなに便利な機器を、自分だけで独り占めしていては・・・・」とベットの上で自問自答を繰り返す中で、気の向くまま思いを巡らせ欲しい自助具などを考え、ボランティアに頼み作ってもらうようにもなった。
そうした取り組みがきっかけとなり、分野に関心があったことと相まって、日本リハ工学協会へ入会し、理事として運営にも参加した。1996(平成8)年り岐阜県の重度障害者支援事業の中でスタートした相談活動も、パソコンの入力からやがて生活全般、そして就労・就学等の相談へと広がり、駅という不特定多数の人が出入りする場所に相談コーナーを開設するまでに至った。
テクニカルエイド・支援技術との関わり 〜受傷から現在まで〜
(注) セ:OT/PT E:エンジニア V:ボランティア
経 過 | 状 況 | 導入機器・支援技術 | セ | E | 自力 | V | 業者 | |
1981 | 受傷 | 断絶期 ↓ |
介助用手動車椅子 | ○ | ||||
車椅子用クッション→フローテーション | ○ | |||||||
1983 | 転院 | 葛藤期 ↓ |
電動車椅子(チンコントローラー付き) | ○ | ||||
車椅子用クッション→フローテーション | ○ | |||||||
1983 | 退院 | ↑ 再構築期 ↓ |
住宅改造 | ○ | ○ | |||
浴 槽 | ○ | ○ | ||||||
簡易エレベーター | ○ | ○ | ||||||
リフト付き自動車 | ○ | ○ | ||||||
手動式リフター | ○ | |||||||
電動ギャツチベット | ○ | |||||||
エアーマット | ○ | |||||||
環境制御装置 | ○ | |||||||
電話(ふれあいーS) | ○ | |||||||
ワープロ→小型キーボード | ○ | |||||||
パソコン→KBマウスエミュレータ | ○ | |||||||
読書ページめくり機 | ○ | ○ | ||||||
新聞めくり機 | ○ | ○ | ||||||
生活に必要な自助具 | ○ | ○ | ||||||
リフター用吊り具 | ○ | |||||||
電動車椅子→2入力式 | ○ | |||||||
車椅子用クッション→ローホ− | ○ | |||||||
カメラ→呼気SW式 | ○ | |||||||
1989 | 事務所開設 | リフト付き自動車買換え | ○ | |||||
事務所及び住居設備改修 | ○ | |||||||
手動油圧式段差解消機、アルミスロープ | ○ | |||||||
パソコン | ○ | |||||||
こまりさん | ○ | |||||||
据置きタイプリフター | ○ | |||||||
電動ギャツチベット | ○ | |||||||
エアーマット | ○ | |||||||
環境制御装置 | ○ | ○ | ||||||
電話(ふれあいーS) | ○ | |||||||
1998 | 就労 | ↑ とまどい・混迷期 ↓ |
ノート型パソコン | ○ | ||||
移送自動車・買い換え | ○ | |||||||
電動車椅子→ダフココントローラー | ○ | |||||||
手動車椅子+J2 | ○ | |||||||
移送用自動車・増車 | ○ | |||||||
2000 | 事務所移転 | ↑ 回生期 ↓ |
住居設備一部改修・手直し | |||||
入浴用シャワーチェアー | ○ | ○ | ||||||
ベット用特殊マット | ○ | ○ | ||||||
座面マット→旅行時の移動用 | ○ | ○ | ||||||
2002 | 現在 | エアーマット→プログラム付 | ○ | ○ | ○ |